清少納言も食べた平安時代の「かき氷」は何味?

 飲食店で「かき氷始めました」のポスターを見かける季節になりました。イチゴや宇治金時といった定番の味のほか、最近は果物がトッピングされていたり、食感が粉雪のようにふわふわだったりと、バリエーション豊かですよね。

そんなかき氷ですが、平安時代の女流作家・清少納言も食べていたそうです。一体、何味のかき氷だったのでしょうか?

 

削り氷にあまづら入れて

  随筆『枕草子』で有名な清少納言は、同書で「あてなるもの」として次のように記しています。

削り氷(けずりひ)に甘葛(あまづら)入れて、新しき金椀(かなまり)に入れたる。

「あてなるもの」とは「上品なもの」という意味。清少納言が上品だと感じたものが列挙されており、その中に「削った氷に甘葛をかけて、新しい金属製のお椀に入れたもの」、つまりかき氷も挙げられているのです。

 「甘葛」はツタの樹液を煮詰めて作る、見た目はハチミツに似た甘味料のこと。砂糖が貴重な時代には水飴と並んで重宝されていました。清少納言が食べていたかき氷は「甘葛」味だったのですね。

 

当時の氷は貴重な高級品

  清少納言が生きた平安時代は、氷は上流階級のみが食べられる高級品でした。冬の間に氷を氷室と呼ばれる穴に運び、夏まで保存していました。地面には茅やすすきを厚く敷き詰めて氷を置き、さらにその上を草で覆って断熱したといわれています。氷が庶民の手に入るようになったのは幕末になってから。天然の氷が大量に輸送されるようになり、横浜に日本初の氷屋が開業。明治16年(1883年)には東京に製氷所が開設されました。清少納言がかき氷を食べていた時代から、実に千年近い時間がかかったというわけです。

 

ちなみに「甘葛」は砂糖ともハチミツとも違う、上品でさらりとした甘さなのだとか。現代でも再現するのはとても手間がかかるそうですが、機会があれば味わってみたいですね。