鯉のぼりはもともと「真鯉一匹だけ」だった?

 

 こどもの日が近づくと、あちこちで見かける青空を悠々と泳ぐ鯉のぼり。春の風物詩として見慣れた風景ですが、なぜ鯉のぼりを飾るのかをご存知ですか?

 

中国の故事『登竜門』が由来

 鯉のぼりは中国の故事『登竜門』が由来だと言われています。日本でも『鯉の滝登り』として知られている民話です。

 昔、中国の山奥に「竜門」という滝があり、そこを登りきると竜になることができるという伝説がありました。たくさんの魚が竜になることを夢見て挑みましたが、唯一登り切ったのが鯉でした。この物語が立身出世を想像させることから、鯉が縁起物となったのです。

 一方、日本の端午の節句は奈良時代から続いてきた行事で、武家の隆盛とともに鎧兜(よろいかぶと)を飾ったり、のぼりを立てたりするようになりました。江戸時代に入るとのぼりを立てる風習が庶民にも普及して、やがて『登竜門』にちなんだ「鯉のぼり」を立てるようになったのです。

 

東京オリンピック以降カラフルに

 江戸時代に誕生した鯉のぼりですが、当時は長男の「黒い真鯉」だけでした。「赤い緋鯉」が追加されたのは明治から昭和にかけてです。

さらに、現在のようなカラフルな鯉のぼりになったのは戦後のこと。1964年に東京オリンピックが開催された際、鯉のぼり職人が五輪マークから着想を得て、青や緑の鯉を取り入れたのです。すると全国的に大ヒットし、「真鯉が父、緋鯉が母、青が長男、緑が次男、ピンクが長女」といったように鯉のぼりで家族構成を表すようになったというわけです。


何気なく見ていた風景も、由来や経緯を知るとより魅力的に見えてきますね。お子さん、お孫さんにもぜひお話してあげましょう。