トイレ用擬音装置、ルーツは殿様の恥じらい?
水が流れる音を疑似的に発生させて、トイレ中の気になる音を消してくれる擬音装置。デパートや公共施設のトイレによく設置されていますよね。一体いつ頃から使われはじめたのでしょうか?
江戸時代にもあった音消しの文化
意外なことに、似たような装置が200年以上前の江戸時代に使われていたことが分かっています。その装置の名前は「音消しの壺(つぼ)」といい、岡山県倉敷市の蓮台寺に現存しています。当時、蓮台寺では殿様が祈願のために宿泊することがあり、客殿の奥に「音消しの壺」を設置しました。殿様が用を足す際にお付きの者が壺の蛇口を捻って水を出し、地面に敷き詰められた瓦(かわら)にしたたり落ちる水の音を発生させる仕組みです。
この「音消しの壺」は江戸城の大奥でも使われていたとのこと。音を聞かれたくないという恥じらいは、今も昔も変わらないものだったのですね。
擬音装置の本来の目的は「節水」
時を経て、現在のような電気式の擬音装置が登場したのは1979年。ちょうどトイレがくみ取り式から水洗式に切り替わろうとしていた時期です。
トイレがたくさんある企業などでは、大人数が音を隠したいからと何度も水を流すと費用がかさみます。さらに当時は全国的な渇水問題もあり、擬音装置が開発された本来の目的は「音を消すこと」よりも「節水」だったのだそうです。
なお、トイレに擬音装置があるのは世界でも日本だけ。日本に来た外国人はとても驚くそうです。一方、水不足は海外のほうが深刻で、米国ではトイレの洗浄水が1回6L以内と法律で決められているほどです。いつか日本の擬音装置が海外でも使われる日がやってくるかもしれませんね。